おはようございます。こんにちは。こんばんは。
高宮永徹です。
唐突ですが、せっかくFlower Recordsのオフィシャル・サイトがリニューアルされたので、これを機にブログを始めようかと思いまして、このようなページを作成してみました。
しかし、僕のことをご存知の方々はご承知の通り、僕は仕事以外のことに関してはかなり三日坊主な節があります。
ジョギングを始めても頑張って2ヶ月、手帳にメモを取ろうと決心して、ちょっと良い手帳を購入しても、せいぜい5ページくらいで余白だらけ、挙句手帳がどこにあるかも分からなくなり忘却、ましてや禁煙なんてこれまで数え切れないくらいやってますが、今も吸ってます。
なのでこのブログもどこまで続けられるか少々(かなり)不安ではありますが、、折角サイトも新しくなった事だし、、まぁやるだけやってみようかと思いついてしまいました。
で、何故いきなり記帳する癖もつけられない僕がブログを書く気になったかというと、これまでのレーベル運営の中で出会ったアーティストや作品について、通常の解説とはまた違った視点からご紹介したり、僕自身もボケてしまう前に、何らかの形で残しておきたいなぁ、なんて思ってしまいまして。
それ以外にも日々楽曲制作を行なっている、もしくはDJ活動の中で感じた事や、手放せないお気に入りの機材や道具の話、レコードについて、、などなども書き溜めていけば、いつかきっとどこかで誰かの参考になるかも…(ならないかも)ですが、やるだけやってみようと思いますので、お時間ある方はお付き合い頂ければありがたき幸せです。
さて、そんなブログの第一回目は、先日リリースされたInspector Norse Remixesに絡めまして、Cruisicというアーティストについて書いてみたいと思います。
Cruisicは岩田幸也君と柿澤龍介君という、大学時代のジャズ研の先輩後輩による2人組です。
そのうちの後輩にあたる岩田君と僕は、これ結構長いお付き合いをしています。
今からちょうど20年前の2004年に、僕がとあるオーディションの審査員をやる機会がありまして、そのオーディションはヴォーカリスト部門と、我がフラワーの音源を使用したリミキサー部門がありました。
そのリミキサー部門に応募してきたのが、Cruisicの岩田君との出会いのきっかけでした。岩田君はその頃は大学生で、Flat Threeというグループ名でオーディションに参加してくれたんですね。
しかし、、リミキサー部門に応募しているにも関わらず、原曲の素材を一切使わず、果てはボーカルを「勝手に」ポエトリーにして誰かに喋らせて、何ひとつ「リミックス」してなかったんです、ぶっちゃけカヴァーです、よく応募してきたなぁ。
ただ、その作品の仕上がりが僕にはとても印象的で、当然そのオーデションのコンセプトとズレていたので、惜しくも次点とさせて頂いたのですが、そんな彼らに興味が沸々と湧いてしまい、交流を始めたのでした。
そうした交流はやがて、今や映画やドラマの監督として大活躍されている小林聖太郎さんの初監督作品となった映画「かぞくのひけつ」のサウンドトラックを担当してもらったり、コンピレーション作品への楽曲提供など、僕やうちのレーベルとの関係は深まって行ったのでした。
そんな期間が数年ありまして、めでたく2008年3月にFlat Threeはファースト・アルバム「Sky Is The Limit」で正式デビューしたのでした。
このSky Is The Limitはボーカル・ハウスを基調にしつつも、ジャズの影響がそこかしこに散りばめられた作品となり、当時はそれなりに話題になった記憶があります。
事実、その後の彼らのセカンド・アルバムは、ジェネオン(現在はユニバーサルNTC)さんから出せるところまで行ったりしました。
しかしながらその後、岩田君はそれまで一緒に活動してきた相棒の五十嵐郁君と袂を分かち、Flat Threeとしての活動はそこで終了と。
その後は宮﨑秀(現BLOOM MUSICのA&R)君とSPECTAという名義でデジタル・シングルを数曲リリースしつつも、実はこっそりと現在の活動に至るCruisicの結成を目論んでいたんですね。
ある日「新ユニットのデモが出来たので聴いて欲しい」と連絡をもらい、数曲のデモトラックを聴かせてもらいました。
その中には彼らの記念すべきデビューシングルとなったAzymuthの代表曲”Jazz Carnival”のカバーも収録されていたのですが、ゆったりしたテンポで始まりつつ、途中から原曲に近いアップテンポにスイッチする、12インチ・シングルに収録するのが適当な尺の構成だったのを良く憶えています。
そこで何度か意見交換をしながら、結果的に前半部分のみで完結する形に落ち着き、めでたく”Jazz Carnival”の7インチ・リリースが決定しました。岩田君としては再デビューですね。
そうそう、相方の柿澤君とは、このシングルの初レコーディングの直前に初めてお会いしたのでした。
大きな体躯に愛嬌のある目尻の奥に潜む狂気(?)、寡黙そうな雰囲気、怒らせたら怖そうだなぁ…ってのが初印象。
だけど実際にいろいろと話したり、スタジオでのレコーディングを共にするうちに、寡黙だけど頼もしい、信頼出来そうなタイプだなと感じました。そしてその見立ては間違っていなかったなと。
柿澤君はかつて、とあるバンドのメンバーとしてメジャー・レーベルで活動してきた経歴の持ち主です。そして彼のSNSを見ると料理もかなりの腕前と見ています。特に本格的なスパイス系の料理を得意としているようで、僕はまだ食べたことはありませんが、たまにSNSにアップする写真はかなり美味しそう。
因みにCruisicという名前、もともと岩田君はTokyo Cloud Cruiseとか、そんなような名前にしたいと言ってたのですが「長過ぎてまず俺が覚えられないよ」と即却下。だけどどうしてもCruiseというフレーズは入れたい!という彼の意向を尊重し、CruiseとMusicを掛け合わせた造語のCruisicという名前で決定したのでした。
「検索」ありきの現代、造語は何かと有利に働くかも?という目論見もありつつ…..
で、世界中で僕と彼ら二人の3人以外は誰も知らないCruisicが、いきなり7インチを出した訳なんですが、これが見事にイニシャル(ショップからの初回受注)の数が全然付かなくて、、まぁそりゃそうですよね。
ライヴすらそれまでほぼやってきてないし。
案の定、いきなり前途に暗雲が立ち込める状態からのスタートとなりました。
そこでミーティングを重ね「まだ存在そのものを知られてないんだから、そりゃあこんなものだよね、めげずに次を出そうよ。次はもう少し周りが注目するようなやつ、やろう」となり、結果的に鬼才Todd Terjeによる傑作Inspector Norseをカバーすることとなり、2度目の制作がスタートしました。
ただ、それだけではやはり話題性に乏しいかも…と悩んでいた時、たまたまSlowly小松君と別件で、渋谷オルガンバーでお酒を飲みながら打合せする機会がありまして、そこでこの曲のことを話したところ「リミックスに興味がある」と言ってくれたので、それは是非に!ということで、Slowly Remixを制作してもらう事となりました。
この仕上がりが素晴らしい!おかげでとてもナイスな7インチ・シングルが完成したのでした。
2019年、セカンド・シングルとしてこの”Inspector Norse”をリリースしたところ、イニシャル数は前作よりも遥かに多く付いたんですね。
恐るべしSlowly!
そして不思議にも、という訳でもありませんが、その辺りからファーストシングルもジワジワとバックオーダーを頂けるようになり、少しずつCruisicの名前も浸透していくのでありました。
(続く)