
Masato KomatsuとRyo Kawaharaによる音楽ユニットSlowlyが、4年ぶりとなるニューアルバム『Two Steps Ahead』をリリース。
さまざまなサウンドをレゲエミュージックを軸にクロスオーバーさせるサウンドクリエイションがコンセプトのSlowlyだけに、今作では国内外のさまざまなアーティストが参加し、彼らにしかできない唯一無二の世界観を作り上げている。
Masato KomatsuとRyo Kawaharaの二人に、新作アルバム『Two Steps Ahead』に関してのお話を中心に、今後の野望についてなどを、ときどきFlower Recordsの高宮永徹氏を交えて聞いたインタビューの後編。
前回の記事はこちらより

B1 : Turn Up The Night feat. Mahina Apple
─では、B面の1曲目「Turn Up The Night feat. Mahina Apple」ですが。これもMahina Appleさんが歌詞を書かれた?
Masato Komatsu(以下:M):彼女とはもともと2曲作ろうというお話をしていまして、コチラは「Hatoba」の後に作った曲なんです。「Hatoba」の方はミディアムテンポというか、いわゆるソウルっぽいレゲエなんですけれど、コチラはかなり曲調を変えてディスコレゲエみたいな曲にしてみました。彼女自身、普段はフロアー映えする曲を歌っているということもあり、彼女の持ち味を出せたらと思って作った曲ですね。これも須長くんがベースで参加しています。
Ryo Kawahara(以下:R):Mahina Appleさんのライブを何回か拝見したのですが、すごく魅力的で惹き込まれるというか。。。
M:キャラクターも含めて、個性が強い人なんですよ。
─KomatsuさんとMahina Appleさんとの出会いは?
M:もともとはGrooveman Spotさんと一緒にやった「My Turn」という曲が7インチレコードでリリースされていて、それがすごく良かったんです。それで人づてにご紹介していただいて、何度か飲みながら今作の相談をしました。
─Mahina Appleさんの声を聞いた時、中世的な感じで最初は男性か女性かが分からず、、いわゆるのレゲエの感じの曲とは合いづらそうな声だと思いました。
M:たしかにレゲエを歌うのははじめてだったそうなのですが、「Hatoba」の方もトラックとの相性がバッチリで、そういう意味では彼女の新しい魅力が引き出せたのかなと。お互いの特色が出せたコラボになったと思いますね。
B2 : How About All About feat. Liliana Andrade
─では、B面の2曲目「How About All About (Us) feat. Liliana Andrade」ですが、このタイトルって。。。
M:コレもモッキーです。自分たちでは思いつかないタイトルですよね。これも「Tell Me Something」と同じ流れで作ったので、メロディも詞もモッキーが書いてくれました。もともとこの曲は僕が中心なんですけれど、UKのストリートソウルというジャンルがあって、80年代末から90年代頭、いわゆるグランドビートとかラヴァーズとか、そういう雰囲気に近いマイナーなジャンルなんですよね。Ryoくんも僕もストリートソウルにハマっていまして、そういう曲を作ろうということで。
B3 : I Get High feat. Jasmine Kara
─その辺りの音を通ってきた人にとっては、懐かしい感じの雰囲気ですよね。では、3曲目「I Get High feat. Jasmine Kara」に関してですが。
M:こちらはフリーダ・ペイン(FREDA PAYNE)「I Get High」のカヴァーです。佐賀県が拠点でDJのフラット ザ レイドバック(FLATT THE LAIDBACK)氏とやりとりした時に、「これ、カヴァーしたらいいじゃないですか?」って言われたんですよ。普段、そういうアイディアってほぼ採用しないのですが、この曲に関してはしっくりきたんですよね。Ryoくんもトラックが出来たのが早かったよね?
R:僕は、めちゃくちゃ大変だったというお話をしようと思ってました(笑)。
M:えっ!大変だった(笑)??
R:Komatsuさんとアナログシンセでかなりいろいろやりとりした覚えがあります。原型が出来たのは早かったのですが、ツメの部分でかなりこだわって。。。
M:アナログシンセの良い質感が出ているトラックなんですけれど、たしかにツメは大変だったかも。でも、ジャスミン(Jasmine)にトラックを投げるタイミングは早かった覚えがあります。
R:ジャスミンさんには「I LIKE IT」も歌ってもらっていて、サイコーに気持ちいい声の持ち主なんですよね。ただ、早めにボーカルトラックがあったから、それを聴きながら作業ができたので楽しかった思いがあります。
─イメージが作りやすかった?
R:そうですね。
M:彼女は仕事が早いので、すぐ送ってきてくれるんですよ。すごく助かりました。
R:最高ですよね。
B4 : You Can Fly on My Aeroplane feat. Swish Jaguar (Long Version)
─では、4曲目にいきますが、「You Can Fly on My Aeroplane feat. Swish Jaguar (Long Version)」は?
M:この曲は、WEEというかなりマイナーなソウルアーティストのカヴァーなのですが、これをやりたいと思ったタイミングで、ちょうどSwish Jaguarmがプライベートで来日するってなって、それで彼をご紹介していただき、相談したら即「いいよ!」と。原曲に思い入れがあったので、再現というか、オリジナルに負けないようにしたかったんです。それでフェンダーローズでquasimodeの平戸祐介、ギターとベースにクロマニヨン(Cro-Magnon)の(コスガ)ツヨシくんに参加してもらいました。Swish Jaguarにはボーカルだけじゃなく、ストリングスやシンセ、アレンジ全体にも参加してもらっています。
R:僕が彼に渡したトラックの質感を変えてアレンジしたり、ピアノも入れてもらったりとか。
M:いわゆるボーカルだけじゃなくて、アレンジにも彼が入って、より良いコラボというか、そういう感じのことが出来た曲です。
R:個人的にはこの曲が一番思い入れがあるというか。トラックのやりとりで曲を作るのが初めてだったので、とても勉強になりましたね。Swish Jaguarのテクニックとか、ノウハウが垣間見れた、すごく彼らしいトラックなんです。
─けっこうやり取りはされたのですか?
M:いえ、何回かという感じなんですけれど、彼と仕事が出来たことはすごく刺激になりましたね。
R:気になったトラックの部分があって、彼が来日した際に思い切って作り方を聞いてみたのですが、そしたら気軽に教えてくれて。でも、教えてもらっても真似できないんですけれどね。そういう話ができたのはかなり勉強になりました。
高宮永徹(以下:T):たしかに、この曲のデータを送ってもらった時に、シンセのストリングスのレイヤーがすごくて。Slowlyにしてはめずらしいと思ってましたよ。
R:トラックの部分、例えばピアノとかの絡み方がとても計算されているんです。単体で聴くと不思議な感じなんですけれど、トラックを合わせるとそれがいい響きになっているというのはすごかったですね。絶対に真似できない。
T:完成形を聴くとそんなに感じないのですが、じつは何本もレイヤーになっていて、、、でも、どう整理しよう、って(笑)。
R:デモのミックスで、高宮さんにお渡しする時に「申し訳ないな」と思いました。僕の方でラフが作れないくらい難しかったんですよ。だから、あとは「高宮さん、お願いします!」って感じでした(笑)。
─それでは最後の曲「Bright Dub – Outro」ですが。
M:これはもともと一曲で作ったトラックを、イントロとアウトロで分けた感じです、、、以上(笑)。
─ザックリすぎですよ(笑)。なぜ一曲を二曲に分けようとおもったのですか?
M:Ryoくんと作った最初のアルバムでもイントロとアウトロを分けたのですが、やはりこの配信時代、アルバムという単位を大事にしたいなという思いもあります。そういう意味ではイントロ、アウトロ、本当はスキップとか、インタールードとか、そういうのも入れたかったのですが、今回はあえてイントロ、アウトロだけにしました。アルバムを通して聴いて欲しいんですよね。
─たしかに、この時代、アルバム単位で聴いてもらうというのはかなり難しいですよね。マスタリングは高宮さんですが?
M:ミックスとマスタリングすべてです。
─高宮さんにとって今作はどんな感想だったのでしょう。
T:前アルバムからわりとリズムマシンの808(ローランド・TR-808)の音をフィーチャーしている楽曲がけっこうあったのですが、今作はよりそれが顕著になった感じでしたね。リズムに関して。そっちにいったことがすごく興味深かったです。前作はもうちょっと生っぽいサンプリングを使っていた感じで、もちろん今作でもそういう部分はあるんだけれど、わりと全体を支配しているリズムアプローチーは808な感じで、前作とは違うSlowlyの世界観を垣間見れたというのが感想です。
─いまのお話で、808感という部分で、前作から変えた理由はなんでしょうか?
M:それは、まさに「How About All About」で話したUKのストリートソウルという部分ですね。自分的にもいまのサウンドに808とかそういうアナログな部分、当時の感じを入れながら、アップデートして作れたらという思いがありました。
─今作の曲順はおふたりで決めた?
M:まず、僕が最初に曲順を考えて、それをRyoくんに渡したのですが、結局、そのままになりました。まあ、忖度はあったかもしれないですけれど(笑)。
R:ははは(笑)
M:Ryoくん的にももちろんいろいろと考えてくれて、提案もあったんですけれどね。最終的にこの曲順になったという感じです。
R:わりとロジック的に考えたらこうなったという感じですね。
M:今作は配信もありますが、我々もLPを出すという部分をベースに考えていたこともあり、そうした時にA面、B面と分ける感じで考えたらこの曲順がベストだろうと。あと、ある程度ビートが効いている曲とかは(盤の)外周にくるのがいいとか、ユルやかな曲は内周の方がそれほど音圧を稼がなくていいし、とか。そういうことも加味しています。

─今作を作ってみて、どういう感想ですか?
M:聴いてみて良いなと。もちろん愛着をもって作っているから良いと思うのは当然なんですけれどね。精一杯やれることはやれたと思っています。
R:日本語の曲があって、英語の曲があってと、曲の雰囲気がかなり幅広いのですが、そこはSlowlyの良い部分だと思っていますね。アルバム単位で聴いた時に、いまのSlowlyらしさが出たと思ってます。だから、ぜひアルバムで聴いて欲しいですよね。あとは、Swish Jaguarとコラボ出来たことがとても大きかったので、一歩2歩と、さらに先に進んでいきたいと思いました。
M:まとめにはいったね(笑)。
R:そういう意味でのタイトルの一歩二歩というイメージもありました(笑)。
─まさにアルバムタイトルですね。
M:Swish Jaguarや海外勢とのコラボ、モッキーは偶然でしたが、すべて良い出会いでしたし、もちろん大比良瑞希さんやMahina Appleの日本のアーティストともです。今作は「Hatoba」がリード曲で、Mahina Appleとはガップリ四つでやらせてもらったというのも良い経験でした。いままでは海外勢が中心でしたが、今作は日本のアーティストともきっちりやっているので、そういう意味では我々としてもチャレンジでしたし、良いモノが出来たと思っています。
T:今作での技術的な話なんですけれど、アナログのカッティングに関しては、じつはオープンリールテープからダイレクトにカッティングしたんですね。これは新しい試みで、アルバム単位でトータルで聴いてもらう時にあまり無理のない感じ、丸みというか、抜け感というか、ハイファイな感じになっています。全体的にレコードとしてのレベルは小さいのですが、あまり潰していないから、音が小さければ上げればきちんと聴けますので。そういう感じで音質重視にしています。もしシングルを持っている人がいれば、そこも聴き比べてもらえるといいかな。音の感じが全然違うと思います。その代わり音量を上げても、無理なく伸びるサウンドになっているので。
─伸びるサウンド、とても重要ですよね。
T:こういう時代に、あえて突っ込まない音の作りにしてみました。
─Slowlyとしての今後の目標は?
M:いまもう次の新しいトラックを作り始めていますけれど、せっかく海外のアーティストともコラボしているのでやはり海外でのリリースもふくめて、もうちょっと認知してもらえるようにしていきたいですね。
R:僕も海外に向けていきたいというのはあります。Komatsuさんから教えてもらったUKストリートソウルって、音の作り方が独特というか、DJっぽい作りなんですよね。そういった意味で作り方の部分に新しさを模索して、ワンステップ上がりたいと思います。あと、ラッパーとのコラボとかもやりたいですね。
M:ラッパーとのコラボは視野に入れています、海外も国内も。日本人とのコラボも面白かったので、別軸でやってみたいですね。
─たとえば。ライブとかSHOWをやる場合は、どういう感じで考えていますか。
M:ライブの話はたまに聞かれるんですよね。将来的な目標としてあります。
R:そうですね。
M:Ryoくんとはライブの話はしていますが、ただ何年後か分かりません(笑)。
─僕が生きているうちにお願いします!
T:僕がね(笑)。
一同:ははは(笑)。
(おわり)
(インタビュー:カネコヒデシ(BonVoyage))


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