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高宮永徹の ET Blog #002 Cruisic その2

こんにちは、高宮永徹です。
前回、第1回目のブログをアップしましたが、1週間って早いですねぇ。
何とかこの第2回目も書けたので、よろしければ引き続きお付き合いくださいませ。

前回は、先日リリースされたInspector Norse Remixesのアーティスト、Cruisicについて書きましたが、先週には早くも次回作品の情報公開がなされました。
今度はリミックスではなく彼らの新作です!が、それについては後ほど触れる事にしまして、前回の続編をお届けします。

今から数えること5年前、Cruisicとして2枚目となるシングル、”Inspector Norse”をリリースしましたが、デビュー盤となったJazz Carnivalよりは好調なイニシャルが付いたとはいえ、まだまだヒットした!というには届かず、所謂「そこそこ」の成績となりました。
というのも、初回の受注数にほんの少しだけ多めにプレスしただけなので、ヒットのしようがないというか…
しかし前回も書きましたが、非常に厳しい船出となったファーストシングル、徐々にではありましたが、追加オーダーが入るようになってきました。

そしてある時、気がついたらどちらも在庫は綺麗になくなり、完売するに至りました。メデタシメデタシ。

そんな折、”Inspector Norse”が発売されるタイミングの2019年9月、韓国はソウルで開催された「Zandari Festa 2019」への出演オファーが舞い込んできたのでした。
舞い込んできたといっても、彼らを指名してきた訳ではなく、レーベルに連絡があり「こんなイベントやるからお宅のとこのアーティスト出してみない?渡航費は自腹、ギャラはないけど宿は用意するよ」と、確かざっくりこんな条件でのオファーだったのです。
ライヴをやれる若いアーティストでは、他にONEGRAM もいますが、彼らはスケジュールが合わず、Cruisicに白羽の矢が当たったのでした。
東京でもライヴなんて2回しかやってないのに、大丈夫?!と心配しましたが、それも含めて良い経験になれば、ですね。

これがそのZandari Festaのフライヤー

僕も同じタイミングで、現地の友人にソウルでのDJギグを組んでもらい同行しました。
そして彼らのライヴをソウルで観る事になったのですが、その演奏内容よりも周りのお客さんの反応が気になって気になって…でも何なんでしょうね、やる時はやってくれるCruisicで良かったです。

生ドラムとシーケンスを融合させて、更にサックスとキーボードという少し変わった編成に、各国から集まったと思われる観客の皆さん、興味津々で観覧してくれました。

彼らのキャラクター的には、ライヴだからと上げまくるようなものではないので、誰もダイブなどしてませんでしたが、気持ちよくグルーヴに乗って楽しんでいる姿を見て、僕はとても安堵したのでした。
また、Cruisicは2人とも英語が得意なので、合間のMCも流暢な英語を駆使してキメてましたね、これは羨ましかったw。

で、一曲目に演奏した楽曲の印象がとても良くて(最初にもらったデモにもその原型は収録されていた)「これをブラッシュアップして次のシングルにするのも良いかなぁ、でもかなりメロウだしなぁ…」なんて考えていたのですが、やはり彼らもその曲を出したい思いがあるのを知り、それを3枚目のシングルとして制作をスタートさせようとしたのでした。

がしかし、、
世の中はコロナ禍に突入し、暫くは何も出来ず様子を見る日々が続きました。
という訳で2020年はCruisicにとってもポッカリと空いてしまった一年に。

コロナ禍の様子を睨みながらではありますが、少しずつ冷静さを取り戻し、レコーディングならやれるという判断に至り、暫く寝かせていた例の楽曲のレコーディングへと、再度進み始めました。

その楽曲は”Floating”という、アレです、OmarのThere’s Nothing Like This(その更に元ネタを辿ればOhio Players)のベースラインに、ゆったりとした4つ打ちのドラミング、浮遊感溢れるシンセで構成された、ほんのりダビーでバレアリックな楽曲です。
(これはそこそこイケるんじゃないか?)と淡い期待を抱いてリリースしたのですが、まだまだコロナ禍中ということも重なり、結果は前作よりも振るわず…なかなか現実は厳しいですね。

Omar / There’s Nothing Like This
こちらが元祖かな。Ohio Players / Heaven Must Be Like This

それでも、今なおさまざまな場面で僕が信頼を寄せる多くのDJの皆さんが、良い感じでプレイしてくれて「これ良いね!」と言ってくれるのがとても嬉しいです。
そういえばこの楽曲は何故か未だに配信してない事に気がつきました。その理由は、、特にありません。
きっとうっかり…なんだろうなぁ。

それから数ヶ月後、そろそろ次を考えなくてはならない時期にきた時に、突然頭の中で何かが繋がったような感覚があったんですね。それが何故かCruisicと808 Statesという….
これを理路整然と説明出来れば良いのですが、どうにも言葉が見つかりません。ちょっとした「閃き」みたいなもので、Cruisicが演奏するアノ曲が僕の頭の中で鳴ってしまいました。

という訳でその次に制作したのが、ご存知歴史的な大名曲のPacific Stateです。
Pacific Stateは、202とか303とか909とか、いろいろバージョン名がありますが、当時リリースされた7インチに倣って”Pacific 707”としてリリースすることにしました。

メンバーにデモを制作してもらい、なかなか良い雰囲気だったので、ひと通りリハーサルを済ませ、レコーディング本番を迎え、とても順調にレコーディングは進んだのですが、レコーディング当日に突然どこかから「4ビートなアプローチで叩いたドラムのテイクも録れ!」との声が聴こえてきた(気がしたので)唐突にその旨を柿澤君に話したのでした。
それまで順調に進行していたおかげで時間にも余裕があったのが幸いしでした。
急なオーダーも何とかクリアして、レコーディングは無事終了しました。

その後、いくつかのオーバーダビングをこなし、ミックスダウン、マスタリングへと進み、予定通りリリースしたのですが、、何故か裏面に収録した例の4ビート・バージョンがUKを中心に欧州で大きな話題となったのでした。
しかしこれには理由があって、岩田君は兼ねてよりロンドンのベテランDJ、Paul MurphyさんとSNSなどで交流していたんですね。で、完成した音源を彼に送ったところとても気に入ってくれたようで、しばらくDJでパワープレイしてくれたとか。やがてその情報は日本にも伝わり、Cruisicの名が一気に(と言ってもニッチな界隈に)知られる事になったのでした。
これでようやく、ある程度の認知度は獲得出来たような感触もあり、ここに至るまでの4年間(そうなんです、既にお気づきのように、彼らは年にシングルを一枚ずつしか出してないんです…)が少しは報われたかな、と思えたのでした。

そして、例のPaul Murphyさんから「ウチで出したいから音源をライセンスさせてくれ」との連絡を頂戴し、以前から彼のお気に入りだったJazz Carnivalとのカップリングで、彼が主宰するレーベルJazz Roomより、晴れてリリースされることになったのでした。

これこそホントにメデタシ、メデタシ!

ようやくヒット(あくまでも7インチの世界ね)と言える作品を出したにも関わらず、彼らの制作ペースは相変わらずのスロー・ジャム。
ただ、モチベーションはそれなりに上がっていたらしく「次はボーカルをフィーチャーしてトライしたい曲がある」と提案してくれたのでした。

(続く)

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