前回はCruisicのメンバーが「次は初の歌物をやりたい!」と提案があって、、、というところまで書きましたが、今回はその続編、そしてCruisicについてはひとまず完結編です。
彼らの5枚目のシングルは、珍しく彼らに既にアイデアがありました。それはTania Mariaによる大メロウ・クラシックス、 “Come With Me”を、シンガーソングライターの古川麦さんをフィーチャーして作りたい、との事でした。
“Come With Me” by Tania Maria
彼ら初の歌ものでフィーチャーされた古川麦さん、僕は恥ずかしながらそれまで存じ上げてなかったのですが、ドラムの柿澤君が以前同じ現場になったことがあるとかで、彼がオファーしてくれたのでした。
初めて古川さんにお会いした時の印象は、とても物静かで品のある佇まいでしたね。
後に調べてみたところ、藝大をお出になられてらっしゃる(何だか書き方も畏まってきちゃった)と。
(古川麦さんの公式サイトはこちらです)
制作はこれまでのように、彼らが作ったデモをチェックし、例によってレコーディング前のリハーサルに臨むのですが、今回のデモを聴いて「より躍動感のあるベースにしたら、更にカッコよくなるかも」と感じたので、リハに入る前に彼らにその旨を提案しました。
そしてベーシストとして抜擢したのは同じレーベルメイト、ONEGRAMのメンバー、Yabu君です。
彼はONEGRAMの他にもいろいろと活躍してて、かつてはバンデラスというラテンバンドでもベースを担当していたし、ファンキーな演奏も得意だし、いろいろ提案もしてくれるので迷わずオファーした感じです。
Yabu君にデモを事前に渡してリハに参加してもらい、いろいろと具体的にアレンジを詰めて行ったのですが、目論見通りのサウンドに満足!と、そこでまた例によって思いつきなのですが、「違うドラムパターンのバージョンも録音しようよ」と、しれっと提案しました。
考えてみたら、マジでドラムの柿澤君は大変です。
同じ曲なのにグルーヴもフィールも違う演奏を続けて録音しなくてはならない、、むしろ全く違う曲の方が気持ちも切り替えられるし、そのほうが楽かも知れません、ベーシストも然り。
でも2人とも嫌な顔ひとつせずに僕のオーダーに対してしっかり向き合ってくれて、むしろいろいろアイデアも出してくれて、めでたく2バージョンのCome With Meが誕生したのでした。
で後日、いざレコーディング。
事前に仮歌を入れて頂いてたので、古川さんの声のニュアンスは把握していましたが、実際に録ってみると何とも透明感のある声でびっくりしたのを憶えています。
そんなこんなでレコーディングは順調に進み、難なく全てのメニューをこなしたのでした。
古川さん、素敵でした。
この作品は2023年のレコードストアデイのアイテムとして発売したのですが、これはあっという間に完売し、むしろプレス枚数をタイトにした事を後悔したくらいです。
と、ここまで2018年のJazz Carnivalから5年の歳月をかけて5枚のシングルをリリースしたのですが、やはりここら辺で出てくるんですよね、「アルバム」という言葉が。
という訳で、以降はアルバムを意識した曲作りにシフトして行ったのでした。
少し話はそれますが、こうして振り返るとCruisicはRSDや、レコードの日のリリースが多いんですね。でもこれは狙った訳ではなく、曲が完成してスケジュール組みをすると偶然にもその辺りになってたんですね。
しかし、昨年から彼らはすっかりアルバムモードになっていたので、今年のRSDはエントリー無しかなぁと思っていたところ、別件でやり取りをしていたディストリビューターの担当さんからメールで「P.S. 今年のRSDはナシですかね?」
と、とってもさりげないメッセージが届きまして、、しかしすでにRSDのエントリー締め切り1週間前で…
(言われてみれば確かに毎年お世話になってるし、何らか間に合う形で出せないかねぇ)と、彼らの未発表曲を聴きなおしてみたり。
あ。そうだ!
Inspector NorseのSlowly Remixを現場でプレイすると、だいたい「これ何ですか?」と訊かれるし(これをリマスタリングするのはアリだな。だけどオリジナル・バージョンはこの先のアルバムにも収録するかも知れないし、そうなるとリリース近いし、それもアレだな…よし、じゃあエデイットでも作ってみるか。)
と、アーティストの了解も得ずに1日作業してエデイット・バージョンを作ってみました。
翌日、それを聴き返したところ、(折角だから毎月レギュラーで回している新宿Bridgeでパワープレイしたい、そのためには…)と、さらに手を入れたくなり、追加作業をしてしまったんですね。
そうこうしているうちに、気がついたらドラムを全て差し替えてしまい、最早リエデイットでは無くなってしまったんです、これはもうリミックスですね。
このブログの「その1」でも書いた、僕が彼らと出会ったきっかけとなった応募曲への意趣返しじゃないんですけどね。
という訳で、僕のET Remixというバージョンが締め切りギリギリで完成し、何とか今年のRSDリリースに間に合ったのでした。
話をアルバムの件に戻します。
デモ作りの最中にもいろいろとやり取りをしていたのですが、僕的には(女性ボーカルの曲も一曲欲しいなぁ)と考えていて、彼らが女性ボーカルの曲をカバーして面白くなりそうな候補曲を提案したくて、ひたすら考える日々を過ごしました。
様々な候補が頭に浮かんでは消え、サブスクで片っ端から検索を掛けて聴いてみたり、レコード棚を漁ったり、YouTubeでいろいろ探してみたり…
なかなか候補が定まらないまま日々は過ぎたのですが、たまたま車を運転している時に、かつて僕が選曲・監修してリリースしていたコンピ・シリーズのHouse Thingsが流れてきて(懐かしいなぁ)なんて思いながら呑気に聴いていたところ、流れてきたんですよ、Finallyが。
そうです、Kings Of Tomorrowが20年くらい前に発表した、あの時期のハウス重要曲のFinallyです。
これだ!
と心の中で小躍りしながら、車を停めて彼らに早速メッセージを打ち込んだのでした。
岩田君から(良いですね、僕も好きです!デモります!)と返事をもらい、この件は一歩前進しました。
それからしばらく経って岩田君からデモが届いたのですが、さて、誰に歌ってもらうか決めなくてはなりません。
がしかし!僕には心当たりがありました。
元々岩田君がFlat Three時代によく歌ってもらっていた杉山未紗さんの声がハマるのでは、と考えていたのでその通りに提案し、早速岩田君が(現在は海外在住の)彼女に連絡をしたところ、秒で「やります」と返信が来ました!と。
早速、デモ・トラックに仮歌を入れてもらったのですが、予想通りバッチリ相性良くて、一気に完成系が見えて来た瞬間でした。
そしてこの曲に加えて、アルバムに収録するための他の曲のプリプロも並行して進めて、レコーディングするまでに至ったのでした。
程なくこのFInallyのミックスダウン(レコーディングしたそれぞれの音を2ミックスにまとめる作業)に移行したのですが、最後の少しの詰めの部分でいろいろと試行錯誤が始まってしまい、幾つかシンセのデータなどを差し替えたりして、ようやく完成したのでした。
納得感満載で出来上がったこのカバーを聴きながらニンマリしつつも、一瞬(同じFInallyでも、Ce Ce P….の方がキャッチーだっ….)なんてふと浮かんだ、亡霊のような言葉を掻き消したのでした、笑
このFinally feat. Misa Sugiyamaは、7月上旬のリリースです。
この曲、早く現場で朝方あたり、むしろ完全に明けた朝に掛けたいです。
DJの皆様も、是非ともプレイして頂けると嬉しいです。
という訳で3回に渡り、これまでCruisicと共有した時間をざざっと思い出しつつ書いてみましたが、如何でしたでしょうか?
圧倒的に文章構成力も語彙力もないテキストでお恥ずかしい…ですが、少しでもCruisicというアーティストを知って頂き、彼らに興味を持ってもらえればありがたき幸せです。
更にはサブスクで(全曲アップされている訳ではありませんが)楽しんで頂いたり、アナログレコードを(ほぼ売り切れてしまっていますが)ゲットして頂いたり、果てはライヴ(予定はありませんが)に足をお運び頂けたら飛び上がるくらい嬉しいです。
さて、次回はフラワーのサブレーベル、BLOOM MUSICより怒涛のリリースを続けている45trioについて少し書いてみたいと思います。
と、予告なんぞしちゃって自分の首を絞めつつ、本稿の締めとさせて頂きます。
引き続きお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
直近のDJスケジュールは下記の通りです。
- 05/10 (Fri) DJ Bar Bridge Shibuya with DJ NORI
- 05/17 (Fri) Date 千駄ヶ谷 ※イブニングタイム
- 05/17 (Fri) DIning Bar SCUBA 幡ヶ谷 ※深夜