二歩目の次へ──Slowly インタビュー(前編)

Masato KomatsuとRyo Kawaharaによる音楽ユニットSlowlyが、4年ぶりとなるニューアルバム『Two Steps Ahead』をリリースする。
さまざまなサウンドを、レゲエミュージックを軸にクロスオーバーさせるサウンドクリエイションがコンセプトのSlowly。
今作では、海外からJasmine KaraやSwish Jaguar、Liliana Andrade、Mockyなどのアーティストに加え、日本からは大比良瑞希やMahina Appleのヴォーカリストが参加し、彼らにしかできない唯一無二の世界観を作り上げている。
今回は、Masato KomatsuとRyo Kawaharaの二人に、過去、現在、そしてコレからのSlowlyについて、そして新作アルバム『Two Steps Ahead』の制作に関してのお話を、ときどきFlower Recordsの高宮永徹氏を交えて聞いてみた。

─まずは最初にアーティストSlowlyとしていくつか質問をさせていただきます。最初はたしか、基本的にMasato Komatsuさんのソロユニットだったと思うのですが、Ryo Kawaharaさんはいつから参加されたのですか?

Masato Komatsu(以下:M):もともとはソロユニットとして活動していたのですが、その後、Shinya Abeくんが初代の相方として参加したんです。彼とは2006年にリリースしたファーストアルバム『Universal Thing』まで一緒でした。Ryoくんは、彼の2011年のソロ作品「Gotta Give It All」のリミックスのお仕事が縁でお付き合いがあって、そこからRyoくんと一緒に活動することになり、「The Right Way」を2018年にリリースしたんです。


─ Ryoさんは、Komatsuさんから声をかけられた感じなんですか?

Ryo Kawahara(以下:R):そうですね。僕自身、もともと高宮(永徹)さんのレーベル、Flower Recordsでお世話になっていまして、その時はハウスミュージックのアナログをリリースしていました。ただ、ちょっと活動が止まってしまっていた時期がありまして、その時にKomatsuさんからお声がけいただいてSlowlyに参加することになったんです。結構、突然だったと覚えていますね(笑)。

M:そのあたりはかなりうろ覚えです(笑)。

高宮永徹(以下:T):SlowlyはFlower Recordsからファーストアルバムをリリースしていて、Ryoくんもうちのレーベルから12インチシングルを何枚か出していたんですね。そういう意味ではレーベルメイトで、ある時、Ryoくんの曲をSlowlyにリミックスをお願いしたんですよ。それが縁でコミュニケーションを取るようになってという感じみたいなんです。僕も知らないうちにデキていたという(笑)。

M:知らないうちにデキちゃった感じです(笑)。

─お父さんになんの断りもなく(笑)!

T:デキちゃったSlowlyです(笑)。

─ちなみに、一緒にやろうとなったのは何年くらいのお話ですか?

M:それが2012、3年くらいかな。

R:一緒に制作したシングル「The Right Way」が18年リリースなんですよ。

M:アレは数年寝かしていたから。Flower Recordsの20周年デジタルコンピレーションのリリースっていつでしたっけ? あのコンピリリースの2年くらい前、、、かな(笑)。

T:2015年あたりだね。

M:どうだったかなー、、、かなり曖昧なグループですね(笑)。

─だいたい2015年くらいからなんとなく、、、という感じですかね(笑)。ちなみに、意気投合されたキッカケはなんですか?

M:同じ時期に同じような系統の音楽を聴いていたのがキッカケです。それで意気投合して「こういう系の音楽を作ろう!」って。

R:そうですね。

M:公称2014年ということで(笑)。

R:そうですね、それを公式でお願いします(笑)。

─おふたりともFlower Recordsの高宮さんとはどういう出会いだったのでしょうか?

M:僕は相当長いですよ!

T:はじめて会ったのは新潟ですね。

M:地元が新潟なのですが、当時、新潟の「プラハ」という箱のパーティで高宮さんをDJで呼ぶことになって、僕が新潟駅に迎えに行きました(笑)。

T:あれは97年くらい?

M:だから、もう30年弱ですね。

T:長い付き合いですね(笑)。

─Ryoさんは?

R:僕は23歳くらいの時ですね。当時、Jazztronikの野崎(良太)さんにお世話になっていたのですが、野崎さんに高宮さんのスタジオへ連れて行っていただいたのが初めてです。

T:ちょうど大学生くらい?

R:2008年の「Ryo Kawahara E.P.」をリリースした時が、大学を卒業したくらいです。

T:野崎くんが連れてきて、「若いけど才能あるから」って。

R:その時にデモCDをお渡ししたんです。

M:Ryoくんも17年か。長いね!

─Slowlyというアーティスト名はどのようにつけられたのですか?

M:最初にFlower Recordsからリリースされたコンピレーションアルバム『F.E.E.L. 2(Far East Easy Listening)』に収録された、Accompliceの曲「遠い道のり (Distino Longe)」をリミックスさせてもらったんです。その時はアーティスト名をまだ決めてなくて。。。渋谷のクラブOrgan Barで飲んでいた時に、当時のFlower Recordsのスタッフに「そろそろユニット名を決めてもらわないと困るんですよ!」って言われまして、「30を過ぎて遅咲きだしSlowlyかなー」みたいな。「じゃあ、それで!」って言った覚えがあります(笑)。

R:え!そうなんですか(笑)。

T:いまはじめて知った(笑)。

M:リミックスは12インチだけのリリースだったのですが。

T:『F.E.E.L. 2』からのEPね。

─アーティストとしてのコンセプトはどんな感じで考えられていますか?

M:初期は違う感じなのですが、Ryoくんと一緒にやりはじめた現在は、レゲエサウンドを軸としていろんな音楽とクロスオーバーしていくというのがコンセプトです。

R:そうですね。

M:僕らが好きなのはレゲエでもどっぷりのレゲエではなく、、、もちろんそれも好きなのですが、やはりソウルフルだったり、他のジャンルと混ざった感じのレゲエがお互い好きなので、それで一緒にやり始めたんですよ。それがコンセプトです。

─例えば、共通の好きなアーティストがいれば教えてください。

M:当時は、ニュージーランドのFAT FREDDY’S DROP(ファット・フレディーズ・ドロップ)とか、The Black Seeds(ザ・ブラック・シーズ)が好きで、それがRyoくんと話が合ったアーティストなんです。お互いソウルミュージックとかジャズとか、そういうものを聞いていたり、クラブミュージックも通過していたので、そのあたりの共通言語あるのですが。そういうレゲエの部分が一番大きかったですね。

R:当時、僕もちょうど同じアーティストを聴いていまして、そのタイミングでお誘いいただきました。だから、運命的というか、タイミングがピッタリだったんですよ。

M:でも、いま出会っていたら、もしかしたらこういうふうにはなっていなかったかもしれないね。

─Ryoさんのもともとの音楽遍歴はどんな感じなんですか?

R:ジャズやフュージョンっぽい音が最初なんですけれど、元はソウルミュージックですよね。ただ雑食で聞いていた時期もあるので、好きなものの時期がバラバラにある感じです。

─ご自身でバンドもやられていた?

R:思春期のころはパンクバンドをやったりしていました。

─パンクですか!?

R:いまの音楽とは全然違うのですが(笑)。そもそも幼少期に通っていた音楽教室がちょっと不思議な音楽教室で。そこでピアノとか、エレクトーンとか、シンセサイザーとかをやっていたのですが、練習の時間よりも先生とお茶する時間の方が長い教室だったんです。ただ、そこの先生がいろんな音楽をカセットテープに落としてくれて、それを家に持ち帰って聴いていたのですが、デイヴ・グルーシンとか、チック・コリアとかが収録されていました。

M:小学生にそんな音楽を聴かせるなんて、すごい先生だね(笑)!

R:当時はまったく分からずに聴いてましたが、あとになって掘り返してみたら、いまレコードで買ったりしているものとけっこうリンクしているんですよね。しいて言うならそこら辺の音楽が最初かな。そこからレアグルーヴとかソウルミュージックのLPに、一曲だけレゲエのアレンジが入っているものを探したり。だから、ニュージーランドのレゲエとか、いろんなジャンルが合わさったようなものが大好きでした。

─Komatsuさんの音楽遍歴は?

M:最初に聞き始めたのは『ベストヒット USA』世代なので、いわゆるそういう海外のヒット曲です。そこから初期パンク、2トーンとかそういうジャンルにハマってバンドをやったり。そのあとにレゲエを聴きはじめました。

─もちろん世代的な部分もあるとおもいますが、流れ的には正統派なんですね。

M:たしかに、パンクからのレゲエへの流れって正統派ですよね。ただ、そこからソウルミュージックからジャズ、ワールドミュージックとかを雑食的に聴きはじめたんです。レゲエ系の人たちは、なかなかクラブミュージックの部分までいかない人の方が多いみたいで、そういう意味では珍しい分類かもしれないですね。

─音楽的に雑食になった起点やタイミングみたいなキッカケはありますか?

M:レゲエってソウルミュージックとかジャズのカヴァーとかが多いじゃないですか。その原曲を掘り下げて、ソウルミュージックとかジャズとか、いわゆるレアグルーヴを聴きはじめたんです。当時、フリーソウルとか、いわゆるレアグルーヴムーブメントのタイミングとちょうど一緒の時代で、その背景もあってそこからクラブミュージックに入っていた感じですね。

─さて、新作アルバム『Two Steps Ahead』の話になりますが、新作はFlower Recordsから4年振りの3rdアルバムということでこの4年間、一体ナニをやられていたんですか(笑)。

M:めっちゃ頑張って曲を作ってましたよ(笑)!じつは前作『Let The Music Take Your Mind』と今作の間、コロナ禍に別名義で『Lost Weekend』というアルバムを一枚作っていたり。だから、絶え間なく制作はやってましたね。

R:そうですね!

─今作は、シングルでリリースされているものも収録されていますが、シングルはけっこうコンスタントにリリースされてましたよね。

M:年に数枚シングルを出して、リミックスもやって、そこからアルバム。そういう流れですね。

T:でも、とにかくリミックスが増えたよね。

M:リミックスはRyoくんとやりはじめてから10何本やっていますね。

T:前作が出てから本作までの4年間に、僕が知っているだけでもけっこうやっているよね。

M:リミックスのお話はかなりいただいていますね。もちろんFlower Records作品のリミックスがメインですが、それ以外の国内外のアーティストからのリミックスもお話をもらってます。

─ちなみに、リミックスのお話が来た時は、おふたりのコンセンサスの取り方はどんな感じなんですか?

M:ビート感とか、大体の大枠の部分は基本的に僕が方向性を決めています。でも、それはザックリなものもあれば、詳細に決めるものもあり、かなりまちまちで。ザックリな時はRyoくんのアレンジにかかっている感じで、詳細に決めたものは僕がイニシアチブを取る感じですね。

(中編へつづく)

(インタビュー:カネコヒデシ(BonVoyage))


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