高宮永徹の ET Blog #004 45trio その1

前回まで3回に渡り、RSD 2024に”Inspector Norse Remixes”を発表し、7月にも最新作 “Finally feat. Misa Sugiyama”をリリースするCruisicについて書きましたが、今回はFlower Recordsのサブ・レーベル、BLOOM MUSICより作品を発表している45trioについて書きたいと思います。
どうぞ引き続きお付き合いの程、よろしくお願い致します。

45trioとは、キーボーディストのSWING-O君がリーダーを務めるピアノトリオですが、そのフォーマットはシンプルなピアノトリオでありながらも、その姿勢は柔軟に、シンセやトークボックスを駆使したりしつつ、しかしライヴでの再現性に重点を置いたアレンジに拘り、主にJazz Funkやソウルなどのブラックミュージックを、HIP HOPへのリスペクトを反映したサウンドで表現するグループです。(彼らのプロフィールはこちら

メンバーはリーダーのSWING-O君に加え、ベースのSUNAPANG君、そしてドラムの久保正彦君で構成されています。
彼らはライヴ活動も比較的活発な方で、自分達で主催するパーティもやっています。
この辺りの音が好きな都内近郊の方々はきっとご存知かと思いますが、下北沢LIVE HAUS(リブハウスと読む)で開催されているパーティ、”My Favorite Soul”も人気を博しています。

もちろん僕もSWING-O君とは旧知の仲で、彼の演奏はかつて渋谷THE ROOMで開催されていた「琉球ホリック」というイベントでのジャム・セッションでのプレイを中心に、よく耳にしていました。
そんな彼らと作品作りを共にすることになったきっかけは、2022年の初夏(だったかな?)に、珍しくSWING-O君から送られてきた1通のメッセージでした。

「Weldon Irvineの”I Love You”をピアノトリオでレコーディングしたのですが、リリースに興味あります?」みたいな内容だったと思います。そこには更に「他のレーベルさんにも声掛けしているので、他所で決まってしまったらごめんね」とも添えられてましたね。

Weldon Irvine “I Love You”は、当然ながら僕も大好きな楽曲です(というか嫌いだという人に出会った事がありません)。
送ってくれたメッセージにはラフミックス(レコーディング直後にささっとまとめてミックスされた簡易的なもの)のダウンロード・リンクもあったので、早速チェックしました。
そのラフミックスを聴くまでは正直、歌が乗ってないヴァージョンはどうかと思っていましたが、聴いて考えを改めました。それくらい完成度の高いインスト・カバーだったんです。

ちょうどその頃、これは偶然のタイミングですが、我がFlower Recordsが運営する渋谷の小箱、Shibuya Club BALLの現場を執り仕切っているSgroove Smoove君こと、宮﨑秀君とサブ・レーベルの発足について意見交換をしていたところでした。
というのも、箱は小さいけれど立地的には多くの小箱がひしめく宇田川町に位置するロケーション、そこで多くの時間を過ごしているであろう彼は、自然とその界隈の新しい才能とのふれあいが多くあると思われるので、そこで見つけた才能を世に紹介するようなレーベルを始めるべきだ、と以前から僕は思っていて、その辺りを話し合っていた頃だったんです。

ちょうどその時期にSWING-O君から連絡が来たのはとてもタイムリーな偶然!と思っていましたが、、どうも背景があったようでした。

現在渋谷で「飲めるレコード屋さん」もしくは「レコードが買えるバー」として、夜な夜な音楽好きが集い人気を博している渋谷のBLOWUPというお店を運営しているDJの”チンタム”君こと、北村圭士郎君がSWING-O君に「Flowerがサブレーベルを始める準備をしているみたいだよ」という情報を伝えていたようでした。
生の情報って、こうして伝播していくんですね。この辺のやり取り、僕はつい最近知ったのですが、こういうのって嬉しいですね。チンタムありがとうね。

そんな訳で、SWING-Oくん、宮﨑を含めた3人で集合し、初打合せをしたのでした。

そこでは、この”I Love You”はもとより、45trioとしてこの先どう展開するつもりのか、もしくはしたいのか、そして我々レーベルとしてはどう考えているかなど、いろいろと話し合ったんですね。
今でも覚えています、渋谷区初台の某カフェでした、冷房が効き過ぎで、寒くて震えていたのも思い出してきましたw
その場ではひとまず双方の意見を持ち帰ったのですが、割とすぐに一緒にやって行くことにお互い合意したのでした。

で、例の”I Love You”を新たに発足するレーベルの第一弾アイテムとして正式にリリースすることを決定したのですが、さて、これをどうインパクトある形、というか、どうすればより良い形で世に出せるか、という課題に向き合うわけですね。

そこで、かつてONEGRAMの”Walking On Sunshine”という楽曲の7インチ・リリースの際にエディットをお願いしたことがあるDJ Koco aka Shimokita君に、今回も本楽曲のエディットをお願いしたのでした。

皆さんご存知かと思いますが、今やDJ Koco君は「世界で最も忙しいDJ」の1人として、大袈裟ではなく世界中を飛び回っています。そんな中でも、彼はこのオファーを快く引き受けてくれて、ラッキーなことにスケジュール的にも良きタイミングで作業日を設定することが出来ました。

季節は夏(だったかな)、45trioによるオリジナル・バージョンのミックスを無事に終えて、DJ Koco Editの作業も順調に進み、マスタリングを経て、めでたくBLOOM MUSICとしての第一弾でもあり、45trioの移籍第一弾のシングルが誕生したのでした。

そしてその年の11月3日、日本版Record Store Dayとも言える「レコードの日」に、無事にリリースされました。

楽曲チョイスの良さ、アレンジ、演奏力の高さ、そしてDJ Koco君による冴え渡るエディット、、これらの要素が融合したことで、歌物のインスト・カバーにしては大きな話題を集め、めでたく即座に完売となったのでした。これは嬉しかったですねぇ。
あ、そうそう、確かオリコン・チャートにも(すぐに売り切れたので一瞬でしたが)ランクインしたんだっけ。

折角の好スタートを切ることが出来たので、この勢いに乗って出来るだけ早いタイミングで第2弾作品を出すべきですが、実は僕の中で「いつか機会があったら形にしたい」と、以前から密かに温めていたアイデアがあったんですね。

それが彼ら45trioの第2弾作品となる”Saudade Vem Correndo”のカヴァーなんです。

(続く)


直近のDJスケジュール

  • 5月17日 金 イブニング・タイム 千駄ヶ谷 Date with 須永辰緒、中本綾子
  • 5月17日 金 深夜帯 幡ヶ谷SCUBA「LP学園」with ROCK-Tee、CHINTAM
  • 5月24日 金 幡ヶ谷SCUBA「Friday Selection」with Sgroove Smoove、Masa Nagamori、Shinozacky、Awane
  • 5月28日 火 新宿Bridge with Toshiyuki Goto
  • 6月は全てのDJをお休みする予定です

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